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9番目の夢.11 [20才と31才の恋話]

 では。そこいら辺のトモダチの一人が話してくれた、私の大好きな話を一つ。
 そのトモダチは昔、フランス語も分からぬままフランスへ行き、地下道でギターの流しをやって生活したことがある男なのですが。フランスでの生活を始めたばかりのとある日。特に理由もなく、彼は香水屋さんにぶらりと立ち寄ったそうです。買う気もない香水を眺めながら、彼は、店員と客の間で交わされる会話を何とはなしに聞きましたとさ。

  客 「ぷっじゅうなんたらかんたらどうのこうの?」
 店員 「うんたら(と言って客のてのひらに香水をシュッと出す)」
  客 「(香りをかいで)うぅん、うにゃらうにゃら」

 くどいようですが、彼はまったくフランス語が解らないわけです。しかし彼曰く、そこで話されている言葉の響きが美しかった、そりゃあもうものすごく美しかったと。いきなり感動し愕然としてしまった彼は、その店で何度も何度も交わされる同じ会話をただただ聞いていたそうです。

 どうやら、
  客 「この香水の香りをかがせて頂けませんか?」
 店員 「どうぞ」
  客 「うぅん、とても良い香りです。どうもありがとう」
 それだけの会話らしいのですが。特に「この香水の香りをかがせていただけませんか」という意味らしき部分の響きが特に美しいと。

 あんまり長いこと同じ言葉ばかり聞いていたものですから、彼はヒアリングでそれを覚えてしまいました。覚えてしまったからには自分で実際にその言葉を発してみたい。当然ですやね。彼は緊張しながら、客の真似をして言ってみたそうです。
  「この香水の香りをかがせて頂けませんか?」
 すると店員が「どうぞ(シュッ)」
  「うぅん、とても良い香りです。どうもありがとう」

 店員がちゃんと答えてくれたことが嬉しかったのか。
 はたまたその綺麗な言葉を発する事の出来る自分が嬉しかったのか私は知りませんが。
とにかく嬉しくて嬉しくてどうしようもなくなった彼は店を飛び出しました。そしてその日のうちにあてもなく香水屋を探して走り歩き、店を見つけては入って行き、同じ会話を繰り返したんだそうな。

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