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記者として独立へ.4 独立した記者に [塾頭の経歴]

 そして秋には、私はハッシュを解雇されてしまいました。
 企業が従業員を解雇する際に満たしていなければならない条件は、法律や裁判所の判例によって定められています。
 ハッシュによる私の解雇は、それらの条件を満たしていない違法なものでした。

 そこで「私に対する解雇は違法なので、裁判所に訴えるつもりだ」と私はハッシュに文書で伝えました。
 すると石田社長たちは、会社の顧問弁護士に相談したそうです。
 そして弁護士から「確かに会社は労働法規に反しているので、提訴されたら敗訴してしまう」と聞かされたようなのです。
 その結果、ハッシュは私に和解を申し入れてきたのでした。
 そこで私は「ハッシュが、今後は労働法規を守る会社になる」ということを条件にして退職に応じたのです。
 私としては、もはやハッシュのような会社に勤めつづけるつもりはありませんでした。しかしハッシュには、私と一緒に働いてきた社員の人たちが残っているのです。
 ですからその人たちのためにも、ハッシュに「今後は労働法規を守る会社になる」という約束をさせたわけです。

 しかし実際には、その後も同社は労働法規に違反しつづけました。
 たとえば同社が解雇したのは、決して私だけではありません。
 私の後にも同社は何人もの社員を解雇したり、退職させたりしていたのです。
 そこで私は、そんな皆にも労働法規の規定を説明しました。
 石田社長によって即時解雇されてしまった人に私が対処法を紹介した結果、会社から解雇予告手当を受けとることができるようになった例などもあります。

 私の退職後もハッシュが労働法規に違反しつづけているのを知った私は、それをやめさせるため、ハッシュの労働法規違反を労働基準監督署に申告しました。
 それを受けて労働基準監督署による調査が行なわれた結果、ハッシュが労働法規に違反していたことは労働基準監督署によっても確認されました。
 ですのでハッシュが労働法規に違反していたことを私が公表しても、事実に反した誹謗や中傷による名誉毀損だと咎められてしまう心配はなくなったのです。
 そして今後は労働法規を遵守するよう、ハッシュは労働基準監督署から指導を受けたのでした。

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記者として独立へ.3 隣人の介護 [塾頭の経歴]

 しかも私が入社した翌年の夏、ハッシュの石田社長は「毎日、少なくとも二十時までは残業しろ」と社員の皆に命じたのです。
 それまでも、ほとんどの社員が毎日のように二十時よりも遅くまで残業していました。しかしこの時、石田社長は改めてそれを強制してきたのです。
 この時期は仕事が減っていて、必ずしも残業をする必要がなくなっていたというのにです。
 しかし従業員との協定がないのに残業を強制するのも、その残業に対して残業代を支払わないのも法律違反であり犯罪行為です。
 なので私はそのことを社長に話し、その命令には従いませんでした。

 実は当時、私が住んでいたアパートの隣の部屋には、松本さんというお年寄りが一人で住んでいました。
 この松本さんは腎不全なので、週に三回は病院へ行って人工透析を受けなければなりません。
 ところがその夏、松本さんは両目ともほとんど見えなくなってしまったのです。
 秋に手術を受けて片方の目だけ見えるようになったのですが、それまで数か月の間はどちらの目もほとんど見えない状態が続いてしまったのでした。
 それまで目の見えていた人が急に失明してしまったので、目が見えない状態に慣れていません。
 ですので両目ともほとんど見えずにいた間の松本さんは当然、一人で外を出歩いたりできずにいたのです。

 そんな松本さんのことを介護するための人が、派遣されてくるようにはなりました。
 両目ともほとんど見えない松本さんが人工透析を受けるため病院へ行く時は、その人が付き添ってくださるのです。
 しかし当時、介護のために派遣された人は一日に三時間までしか付き添いをしない決まりになっていました。
 松本さんが何時間もの人工透析を終えて帰宅する時には、その人は付き添ってくださらないのです。
 そこで私が病院へ行き、ほとんど目が見えない松本さんに付き添って、私たちの住んでいるアパートまで帰ってくることになりました。

 松本さんの人工透析が終わるのは、だいたい十九時半くらいです。
 そして松本さんが人工透析を受ける病院へは、ハッシュから一時間くらいで行くことができます。
 なので私が本来の退社時間である十八時半にハッシュを出ると、ちょうど松本さんの人工透析が終わる頃に迎えに行けたのです。

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記者として独立へ.2 転職して記者に [塾頭の経歴]

 さらには私の学歴も、この時の就職活動には不利に働いたようです。
 私は自分の、いわゆる偏差値に対して低めの大学を二つ卒業しました。
 しかし履歴書には、卒業した大学の名前や学部だけしか書かれません。
 したがって、それだけを見るかぎりでは私の知的能力が実際よりも低く推定されてしまうわけです。
 大学での成績表などまで見てもらえれば、この点は解消できる可能性があるのでしょうけど。

 八月から十月にかけて私は何十という会社に履歴書や職務経歴書を送ったものの、再就職先が決まらずにいました。
 ところで私は、レイディックコンサルタントの「二階」で働けるようにと私が口利きをした人たちの身のふり方に対して、若干の責任があると考えられます。
 彼らを後に残して自分だけレイディックコンサルタントを辞めてしまったことに対しては、気が引ける思いもありました。
 ですから転職のための情報誌などを見ていて彼らに適していそうな求人があったら、それを彼らに伝えたりもしていたのです。
 自分が再就職してからというものは忙しくなってしまって、もはやそういうことはできなくなったのですが。

 十月の末に私はようやく、とある会社で正社員として就職することを決めました。
 その会社の正式な社名は、株式会社ハッシュといいます。
 当時は、コンピューターに関する雑誌の制作を主な業務としていました。
 その雑誌などに載せる記事を書くための記者として私は、株式会社ハッシュに採用されたのです。
 私が『嫉み深い男』と『「三毛猫ホームズ」の謎』という二冊の本を書いたというので、同社の石田社長は「うちの会社に今度、作家が入社してくるぞ」と社員に話していたそうです。
 決して多くの部数は売れずに終わった二冊の著書が、私の再就職のためには役立ってくれたのでしょうか。

 かくして私は十一月から、株式会社ハッシュで記者として働きはじめました。
 ここに至ってようやく、文章を書くことそのものが純粋に私の本業となったわけです。
 その意味では、祝うべきことだったのかもしれません。
 しかし入社してみてわかったことに、同社は労働法規に違反してしまっていました。
 入社する前に面接を受けた際には「うちの会社は労働法規を遵守している」と私に言っていた、というのにです。

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記者として独立へ.1 転職先を探す [塾頭の経歴]

 三十五歳だった年の四月にレイディックコンサルタントを退職した時、私は次の転職先が決まっていなかったので、ひとまず体があいたわけです。
 そこで時間ができたこの機会に、それまで書きかけだった「民に自由を」という題の長篇小説の続きを書いて、七月に完成させました(この「民に自由を」は後に「終らない夜の始まり」と改題されました)。
 そして八月から、再就職のための活動を始めたのです。

 率直に言って最初のうちは、わりと簡単に再就職先が決まるだろうと思いこんでしまっていました。
 なにしろ私は私はレイディックコンサルタントで、全く新しい分野の仕事の受注こそできずに終わったものの、一つの部署の立ち上げに成功したのです。
 その部署を管理する、中間管理職としての経験もすることができました。
 しかもコンピューターのプログラム作成などに関する知識も持っています。
 したがって、わりと簡単に再就職できるはずだと思っていたのです。

 しかし実際の転職は、私が思っていたほどには簡単でありませんでした。
 三十代の半ばを過ぎると再就職は急に難しくなる、と言われていることなど私は全く知らずにいたのです。

 二度目の大学である放送大学の在学中に、レイディックコンサルタントでアルバイトを始めたこと。
 そして放送大学の卒業後に同社で新しい部署の立ち上げに関わり、その部署を管理する立場になったこと――
 私の履歴書と職務経歴書には、それらの事実が書かれています。
 その途中で正社員になった、などとは当然ながら書かれていません。
 しかし「新しい部署の立ち上げに関わり、その部署を管理する立場になった」のであれば、その時点では正社員になっていたのだろう――
 どうやら、そう早とちりをした上で私に興味を抱いてくださったらしい会社もありました。
 しかし実際にはレイディックコンサルタントにおける私が最後までアルバイトという立場でいたことを面接の席で話したところ、私に対する興味を失ったようです。

 それまで正社員として働いていた人であれば、自社でも正社員としての雇用を検討する。しかし長くアルバイトとしてしか働いていなかった人のことは、正社員として雇用しない――
 そういう方針の企業が多いということも私はこの時、初めて知りました。
 でも、この方針は合理的ではないと言うべきなのではないでしょうか。
 表向きの立場が正社員だったのかアルバイトだったのかではなく、実態でこそ判断するべきなのではないでしょうか。

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