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起業を模索した月日.10 新会社を断念 [塾頭の経歴]

 とはいえ結果として多くの部数は売れずに終わったものの、私は決して自費出版でない本を個人として出版することができました。
 しかしレイディックコンサルタントという会社として建設関連でない新たな分野の仕事を受注することは、ずっとできずにいたのです。
 これでは私が行なっている営業活動は、会社に何の利益をももたらさない無駄な労力だと言わざるをえません。
 それだけに私としては、肩身の狭い思いを禁じえないようになりました。

 しかも同じ頃、佐藤社長は体調を損ねてしまわれたのです。
 幸い大事には至らなかったのですが、それからというもの佐藤社長は気持ちのはりを失ってしまわれたようでした。
 レイディックコンサルタントの「二階」を新しい別の会社として独立させるだけの気力を、持てなくなってしまわれたのでしょう。
 その話を私が佐藤社長と二人きりの場で持ち出しても、もはや気のないような返事しか聞かせてもらえなくなってしまったのです。

 それと並行して、レイディックコンサルタントの経営陣のうちの一人が何かと私のことを目の敵にするようになりました。
 どうやらその人は、自分には理解できない業務を行なっている「二階」のことを快く思っていなかったようなのです。
 このまま「二階」の業務や人員が増えつづけたら、自分が会社の経営に関われる度合が低下してしまうと心配していたのでしょうか。

 しかし社長が「二階」の部署の拡充に力を入れているかぎり、その人としては表立って異を唱えることができません。
 ところが佐藤社長は病気の後、「二階」の拡充に対して必ずしも精力的ではなくなってしまいました。
 そうなった今や、「二階」のことを快く思っていなかった人にとっては私が「二階」の象徴というか代表のような存在に感じられたのでしょう。
 そして後は私という「出る杭」さえ打つことができたら、もはや「二階」に自分の立場を危うくされてしまわなくても済むようになると考えたのでしょう。

 かつて「二階の管理は君に任せることに、経営会議で決まったから」と私に言った、その同じ人が「そんなことを言った覚えはない」などと言うようになったのです。
 そして何かにつれて、あれこれと私に対して辛く当たろうとするようにもなったのでした。
 だから私は「このまま私がこの会社にいつづけたとしても、もはや未来はないみたいだな」と思わされてしまったのです。

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起業を模索した月日.9 二冊目を出版 [塾頭の経歴]

 ですから私も当時、建設関連ではない新たな分野の仕事をレイディックコンサルタントという会社としてではなく、個人として受注することはできました。
 あっぷる出版社という社名の出版社から、私の本を出版してもらったのです。
「嫉み深い男」の時とは違って、自費出版ではありません。
 出版のための費用は出版社が負担する、普通の商業出版です。

『磯野家の謎』という本があります。
 長谷川町子が描いた漫画「サザエさん」に関して、薀蓄を語っている本です。
 この『磯野家の謎』の著者は、「東京サザエさん学会」だということになっています。
 これが大いに売れたのでその後、さまざまな他の漫画などに関する薀蓄を語った本が出版されました。
 そこで私も一冊、その手の本を書いてみたのです。

 推理小説家の赤川次郎は、題名に必ず「三毛猫ホームズ」と冠される連作を書いています。
 赤川次郎が書いた多くの作品の中でも、最も売れている部類のようです。
 そこで私は、この「三毛猫ホームズ」の連作に関する薀蓄を語った本を書いてみました。
 それが『「三毛猫ホームズ」の謎』という題で、あっぷる出版社から出版されたのです。

「三毛猫ホームズ」の連作に関する薀蓄の類をレイディックコンサルタントの「二階」の皆に拾いあげてもらい、それを私が文章にまとめたとしたら――
 著者名としては「三毛猫愛好協会」などと名のって、この『「三毛猫ホームズ」の謎』の執筆をレイディックコンサルタントの「二階」の業務とすることもできたのでしょう。
 しかし『「三毛猫ホームズ」の謎』は私が一人で書き、私という個人の著書として出版されることになりました。
 だとしたら、レイディックコンサルタントでの仕事中に『「三毛猫ホームズ」の謎』の執筆や校正などの作業を行なうわけにはいきません。
 それらは退社した後の夜や、休みの日にやらなければならなかったのです。
 それだけに大変ではありましたが、どうにか出版にこぎつけることができました。

 赤川次郎が書いた「三毛猫ホームズ」の連作は多くの部数が売れるのだから、それに関する薀蓄を語った本も売れるかも――
 おそらくあっぷる出版社では、そう期待してくださったのでしょう。
 そして多くの書店の人たちも、同じように期待してくださったのでしょう。
 いきなり最初から八千部も印刷していただいた『「三毛猫ホームズ」の謎』はあちこちの書店で、いわゆる「平積み」にされるなど、目立つように並べていただきました。

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起業を模索した月日.8 トシオと働く [塾頭の経歴]

 でも「嫉み深い男」が出版された頃、やはり私にとっては高校の生物部の後輩にあたる別の男性がレイディックコンサルタントの「二階」で働きはじめました。
 この男性は、『究極の愛を掴んだ31才』などにトシオという仮名で登場します。
 ですので彼のことは、ここでもトシオという仮名で呼んでおくことにしましょう。

 トシオは高校から英語の専門学校へ進学したものの、そちらを卒業した後も正社員としての就職はせずにいました。
 しかしレイディックコンサルタントにであれば、正社員として就職してもいいかなと考えたようです。
 私がレイディックコンサルタントで長く働いているのを知っていたので「おそらく、いい会社なのだろう」と推測したのでしょう。

 とはいえ「二階」が独立してできた新しい会社ならばともかく、レイディックコンサルタントは私にとって「正社員になるよう後輩に無条件で勧めることができる会社」ではありません。
 原子力発電所の仕事など、私の良心や倫理感には抵触する業務も行なわれているからです。
 なので私は「ひとまずアルバイトとして働いてみて、うちの会社が気に入ったら正社員になればいいのでは」とトシオに勧めたのです。

 幸いトシオは、わりとすぐレイディックコンサルタントの「二階」での仕事になじんだようでした。
 とはいえ彼も、高校で生物部にいた男です。
 自然の保護や環境問題に対しては、かなり真面目な考え方をしています。
 しかしレイディックコンサルタントでは、自然の破壊につながりかねない仕事も多いのです。
 それらの仕事に対してはトシオも私やナツヨと同様、抵抗感や嫌悪感を禁じえないことでしょう。

 そこで私はトシオのためにも、早く建設関連ではない別の種類の仕事をレイディックコンサルタントの「二階」で受注できるようになりたいとの思いを新たにしました。
 なのでトシオがレイディックコンサルタントの「二階」で働きはじめてからというもの、私は建設関連でない別の分野の仕事を受注できるようになるための営業活動に取り組みはじめたのです。

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起業を模索した月日.7 一冊目を出版 [塾頭の経歴]

 そこで私は、「嫉み深い男」という題の長篇を書きはじめました。
 決して実験的だったりしない、とても素直な内容の恋愛物語です。
 ところが書きすすめているうちに、困ったことになってしまいました。
 なんと、本にしたら二冊になりそうなくらいの長さになってしまったのです。
 よく知られている例で言うなら、ちょうど村上春樹の『ノルウェイの森』上下二巻と同じくらいの長さです。
 どうにか書き上げはしたものの私は、すっかり途方に暮れてしまいました。
 この長さの恋愛小説を募集している新人賞は当時、一つも見あたらなかったからです。

 そんな時「本として出版するための原稿を募集しています、という広告が新聞に載っていたぞ」と教えてくれた友人がいました。
「その出版社は普段、わりといい本を出しているみたいだし」とも言うのです。
 そこで私も、その広告を探して見てみました。
 それによると日本図書刊行会という組織が、本として出版するための原稿を募集しているそうなのです。
 おそらく私の友人は、この日本図書刊行会を国書刊行会と混同したのではないでしょうか。
 国書刊行会は確かに、その友人が好みそうな本を出版していますので。

 しかし「本として出版するための原稿を募集」しているというので、私は「嫉み深い男」の原稿を日本図書刊行会に送ってみました。
 すると「あなたが出版のための費用を自分で負担するのであれば、『嫉み深い男』を本として出版する」という主旨の返事が来たのです。

 著者から費用を受け取って本を出版する業者の存在は、この数年後くらいから日本でも広く知られるようになりました。
 しかし私が「嫉み深い男」を書いた頃には、まだ必ずしも世間で広く知られてはいなかったようです。
 その手の業者は出版のための経費と人件費とを著者から受けとれるので、できあがった本が売れなくても困りません。
 そのため、できあがった本を売ることには必ずしも熱心でなかったりします。
 もしも純粋に自分が本職のもの書きになるため、「嫉み深い男」を書いたのだったとしたら――
 私は決して、そのような出版社から「嫉み深い男」を出版しようとはしなかったことでしょう。

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