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起業を模索した月日.5 新会社を模索 [塾頭の経歴]

 でも佐藤社長は当時、いずれ「二階」の私たちをレイディックコンサルタントからは独立させて別会社にすることを考えていました。
 私と二人で飲みに行ったりした時に、そういう構想を語ることが多かったのです。
 なにしろ「二階」の私たちは、実際の建設現場へ行って計測器の設置や取り外しなどの作業を行なう社内の他の人たちとは、全く毛色の違った仕事をしているわけです。
 その双方を同じ一つの会社にしておくことは、いろいろと問題も多かったのです。

 そして「二階」が独立してできる新しい会社の方であれば、私も正社員になってもいいかなと考えてみたりしていました。
 その会社が本当にできたとしたら、そちらで私はわりと中心的な立場になるはずだと考えられます。
 だとしたら、私の良心に抵触するような仕事は断ることもできるはずだろうと考えたのです。

 しかも私には以前から「できたら人生のどこかで一度、気心の知れた人たちと一緒に新しい会社を立ち上げる経験をしてみたい」という気持ちがありました。
 もちろん本当に新しい会社を作って経営を軌道に乗せるのは、かなり大変な場合が多いと考えられます。
 それを思うと実際には、そう簡単に体験することができるとは期待できません。

 しかしレイディックコンサルタントの「二階」が独立して別会社になるという形であれば、わりと簡単に実現できる可能性があったのではないでしょうか。
 なにしろ坂田電機株式会社は計測計画書や報告書などの作成を、いくらでも私たちに発注したがっているのです。
 当面は新しい会社の経営を、それらの仕事を中心にして成り立たせていくことができるでしょう。

 しかもその新しい会社は、鉄道総合技術研究所がらみの仕事も受注できるわけです。
 幸いそちらの仕事には、私の良心に抵触してしまいそうな部分がありません。
 ですので「当面は坂田電機株式会社から受注する仕事の方が中心となるだろうけど、いずれは鉄道総合技術研究所がらみの仕事の方を増やしていきたいな」などと私は考えてみたりしていました。

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起業を模索した月日.4 原発を回避 [塾頭の経歴]

 それから私は、原子力発電所に関する仕事にも決して関わりたくないと会社に言ってありました。
 なにしろ原子力発電によって生じる核廃棄物は、安全に処理や管理する方法が確立されていなかったからです。
 しかも原子力発電所で大きな事故が起きたら、広い範囲と長い期間にわたって環境が損なわれてしまいます。
 それらを考えると、原子力発電に関わる仕事をすることは私の良心に抵触するとしか思えなかったのです。

 原子力発電は安全だから心配は要らない、と唱えている専門家の人たちもいました。
 しかし坂田電機株式会社やレイディックコンサルタントには長い期間、原子力発電所に出向して働いている人たちもいたのです。
 そんな彼らの話を聞いても、原子力発電が絶対に安全だなどとは私には信じられずにいました。

 原子力発電所などではない一般の建設現場でも、建設業者の安全管理担当者は決して事故が起こらないようにと安全対策を立てます。
 それらの対策を現場の全員が完全に守って実行したら、事故が起こる可能性はきわめて低くなるのかもしれません。

 しかし現実には、表向きの安全対策が全て全く完全に守られるとは期待しにくいのです。
 現場で実際に作業をする人たちが安全対策のうちの一部分を軽んじたり、ないがしろにしてしまうことは決して珍しくないからです。

 彼らも上の立場の人たちの前では表向き、安全対策を全て全く完全に守っているふりをします。
 ですから「うちの工事は完全に安全に行なわれている」と、「上の立場の人たち」は思い込んでしまっているのかもしれません。
 でも実際には、決してそうではない場合が少なくないのです。

 そして、それは原子力発電所においても同様だったようです。
 実際に原子力発電所で働いている人たちの話を聞くと、原子力発電が完全に安全で絶対に事故が起こらないような形で行なわれているとは私には信じられなかったのです。
 そして「なんらかのきっかけによって事故が起き、広い範囲と長い期間にわたって環境が損なわれてしまう可能性が絶対にないとは言いきれない」のだとしたら――
 そのような原子力発電所に自分が関わることは、私の良心や倫理感が許さなかったのです。

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相手に染まる女が可憐? [恋愛小説などから学ぶ]

アントン・チェーホフ「かわいい女」新潮文庫など

 本作の女主人公は最初、劇場のある遊園地を経営しているクーキンという男性と結婚します。
 そして、すっかり「劇場主のおかみさん」としてふるまうようになるのです。
 そんな様子が本作では、たとえば次のように描かれています(神西清氏による邦訳から引用させていただきます。以下も同様です)。

芝居や役者についてクーキンの吐いた意見を、彼女もそのまま受け売りするのだった。やはり良人と同様彼女も見物が芸術に対して冷淡だ、無学だといって軽蔑していたし、舞台稽古にくちばしを出す、役者のせりふまわしを直してやる、楽師れんの行状を取り締まるといった調子で、土地の新聞にうちの芝居の悪口が出たりしようものなら、彼女は涙をぼろぼろこぼして、その挙句に新聞社へ掛け合いに行くのだった。

 しかし間もなく、クーキンは死んでしまいます。
 そして女主人公は、ヴァーシチカという愛称の男性と再婚します。
 このヴァーシチカは材木置場の管理人だったため、女主人公は今度は「材木置場の管理人のおかみさん」としてふるまうようになります。
 たとえば、次のようにです。

「当節じゃ材木が年々二割がたも値あがりになっておりましてねえ」と彼女はお得意や知合いの誰彼に話すのだった。「何せあなた、以前わたしどもでは土地の材木を商っておりましたのですけれど、それが当節じゃヴァーシチカが毎とし材木の買い出しにモギリョフ県まで参らなければなりませんの。その運賃がまた大変でしてねえ!」そう言って彼女は、さもぞっとするように両手で頬をおさえて見せるのだった。「その運賃がねえ!」

 でもやがて、ヴァーシチカも死んでしまいます。
 そこで女主人公は次に、彼女の家の離れを借りて住んでいた獣医の男性と親密な仲になるのです。
 そんな様子が本作では、次のように描かれています。

「わたくしどもの街では獣医の家畜検査というものがちゃんと行なわれておりませんので、そのため色んな病気がはやるんでございますわ、のべつもう、人様が牛乳から病気をもらったとか、馬や牛から病気が感染なすったとか、そんなお話ばかり伺いますのねえ。まったく家畜の健康と申すことには、人間の健康ということに劣らず、心を配らなくてはなりませんわ」
 彼女の言うことは例の獣医の考えそのままの受け売りで、今では何事によらず彼と同じ意見なのだった。してみればもはや、もともと彼女は誰かに打ち込まずには一年と暮らせない女で、今やその身の新しい幸福をわが家の離れに見出したのだということは、語るに落ちた次第だった。

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築かれた絆は断ち切れない [恋愛小説などから学ぶ]

マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』

 もう一つ、ボクの頭の中で鳴り響いていた言葉がある。
 マーク・トエインが書いた「ハックルベリー・フィンの冒険」に出てくる、ハックルベリー少年の次のような科白だ。
「よっしゃ、わかった。それなら僕は、地獄へ行こう。―――」

 白人のハックルベリー少年は旅の途中、たまたま黒人のジムと道連れになった。そして二人で助け合いながら、いろいろな危機を乗りこえてきたのだ。その結果としてハックルベリー少年とジムの間には、堅い心の絆が築かれている。
 しかしジムは本来、奴隷だったのだ。そして当時の社会では、奴隷は主人の元へ連れ返さなければならないことになっていた。それが世の中の決まりごとであり、誰もが守るべき道徳だとも見なされていたのだ。それに反した者は死後、地獄へ落ちるとされている。
 そのため、ハックルベリー少年は悩み迷わざるをえなかった。はたして社会の掟を守り、ジムを主人の元へと連れ戻すべきなのか。それともジムとの間に育まれてきた心の絆を大切にして、これからも彼と一緒にいつづけるべきなのかと。

 もちろんハックルベリー少年の素直な気持ちとしては、ジムと別れてしまいたくない。だが彼は、世間で唱えられている道徳を信じてもいる。ジムを主人の元へ返さなければ自分は地獄に落ちてしまう、と心の底から信じているのだ。
 地獄に落ちるのが嫌なハックルベリー少年は、だから大いに迷い悩んでしまった。だがその末に、彼は覚悟を決めるのだ。たとえ自分は地獄へ落ちる羽目になろうと、決してジムのことを見捨てはしないと。

「よっしゃ、わかった。それなら僕は、地獄へ行こう。―――」
 このハックルベリー少年の言葉を思い出したおかげで、ボクは心を勇気づけられた気がする。
 ボクもまさしく、ハックルベリー少年と同じような迷いに直面していた。ボクがナツヨのそばにとどまりつづけることは、それまでボクが信じていた道徳に反してしまうからだ。「卒業生は決して私情に流されず、いつでも部員たち皆のことを考えなければならない」という道徳に。

 だがボクは、ナツヨのことを見捨ててしまいたくはなかった。ナツヨとの間に築かれていた心の絆を、決して断ちきってしまいたくはなかった。
 だからこそ、ボクは心を決めたのだ。自分は今後もナツヨのそばにとどまって、彼女の心の支えになりつづけようと。
 たとえその結果としてボクは、これまで自分に課していた道徳を破った罪で地獄へ落ちる羽目になってしまうのだとしても。―――

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